ハルカとの出会い

2010年初夏、当時我が家には、その半年ほど前に次男が拾ってきた「あめ」という雄猫がいた。だからといって、2匹目を飼うという発想はなかった。今からひと泳ぎするために行った先での突然のことだったし、心の準備もなかった。その子猫を連れて帰る気は無かった。

 

小雨の降る肌寒い夕方の、まだ明るい時間帯だった。いつもはきれいに清掃されている場所なのに、コンビニ弁当の容器と食べ残しが散乱し、揚げ物の匂いが鼻についた。口の周りが油で汚れたやせ細った一匹の子猫が、何か食べさせろと言わんばかりにだれ彼なくつきまとうので、子供たちや大人たちに遠巻きにされていた。ちょうどのタイミングで真横を通る羽目になった筆者は、子猫のターゲットとなった。しかし、追いかけてくる子猫をかわいそうにと思いながらも、小走りで引き離してプールに向かった。

 

泳ぎながらも何となくその子猫のことが気になった。運良くだれかに拾われていったかもとか、それとも人気のない施設内をさまよいどこかに身を隠してしまったかもとか。いや、既に車に轢かれ命を落としてしまったかもしれない。というようなとりとめのない思いがよぎる。既に入り口で絶ち切った糸なのに、今さら思いめぐらしてもどうしようもない、終わったことなのに。

 

 

 

あにはからんや。すっかり暗くなった出口で、まさかの再開である。まるでずっと筆者を待っていたかのように。ここで多少なり運命を感じないわけがない。足元に体をこすりつけながらフラフラと、グルグル回る。小さくミャーミャー甘えてくる。ガタガタと小刻みに震えるやせ細った体を両手ですくい上げる。まんまと、子猫の術中にはまった。帰路の車中で餌をねだる鳴き声は、次第に強くなり、ターゲットにされた者を脅すかのような強欲さを感じさせた。

 

これが2匹目の猫、ハルカとの出会いである。

生まれて間もない母乳が必要な時期に、母猫と引き離されひもじさを通り越し、コンビニ弁当の塩辛い昆布の佃煮交じりのご飯と、脂っこい魚フライと、とにかく口にできるものであれば何でも口にしたのであろう、ふれあいスポーツランドでのあの日の、フンガフンガとかわいい唸り声を発しながらの食事。命ぎりぎりのすさまじい食事の光景。

 

大人になった今では体重5.2kg。うっかり自動給餌器のカリカリを切らしたりしたら、あの時の生命力丸出しの狂ったような仕草をチラッと垣間見せる。