猫に噛まれた日

夏場の夜は、ほとんどの窓や引き戸を網戸にして外の冷気を取り入れている。常に逃走のチャンスを狙っている猫たちが前足で網戸をスライドさせ脱走しないように、当然、外からつっかい棒を施している。

いつからだっただろうか、外猫が網戸越しに挨拶に来るようになった。飼っている3匹の猫たちは、いずれも生後間もなく孤独に捨てられたからか、家人以外の人間や車、ピンポンというチャイムの音が大嫌いのようだ。もう、その反応はすさまじい。一匹が猛ダッシュで駆け出すと、後に続いて他の2匹も2階に駆け上がりベッドの下あたりに身を隠してしまう。挨拶にやってくる外猫に対しては、いきなり、ヴワーーーオーーヴオワーーーオーーーーと大音声の唸り声をあげ、網戸越しにシャーシャー猫パンチの応酬がおっぱじまる。近所迷惑になるから、急いで障子を締めお互いの姿が見えない状態にしてしまうのだが、この時、注意が必要だ。特に最初に喧嘩をぱじめた猫は、相手の猫の姿が見えなくなっても勢いが付いた興奮がなかなか冷めない。全身の毛が逆立ち、唸り声もしばらく続き、必ずと言っていいほどかねて仲のいい3匹同士でにらみ合いに発展する。しばらく三つ巴でのヴワーーーオーーヴオワーーーオーーーーと牽制し合う状態が続く。時には、取っ組み合いになる。

つい先日の週末の深夜、ついに筆者の腕が喧嘩の相手にされてしまった。注意はしていたのだが、真夜中のことで、静寂を切り裂く唸り声に飛び起き、障子を閉めようとした右腕にとびかかられてしまった。前足の爪でがっちり固定され、がぶりと2本の牙が腕に突き刺さったまま、前後左右に揺さぶられ、牙が傷口をぐいぐい広げる。後ろ足の爪も容赦もなく腕の裏側をキックする。傷口を流水で洗い、消毒液を掛け応急処置はしたが、翌日には、腕の大半が腫れて傷口が痛みだし、指や手首やひじを曲げる動作に痛みを感じはじめ、最近のマダニからの感染ニュースもあり、怖かったので週明け病院にかかり、化膿止めを処方してもらった。医師が言うには、猫の口の中には人間にはいない細菌がいて注意が必要とのこと。

噛んだ猫は、次の朝には甘えてきた。これが習性というか、そんなものとかと思うことだった。