脱走は、待つしかない。

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過去に猫のみなさんが脱走した箇所は、一階の窓やサッシの引き戸と玄関である。2階のベランダやサッシ越しに脱走したことはない。3匹とも、屋根伝いに飛び移るには危険性が高いと判断しているらしくその勇気はないらしい。最古参のオスの「あめ」が初めて脱走した時の経験を元に、一階の窓やサッシの引き戸には、外側から厳重につっかい棒を施している。でも、2か所のサッシだけは、生活するうえで締め切るわけにいかないので、つっかい棒はできない。だから、この2か所のサッシの鍵掛けを忘れてはならないのだが、この夫婦はやらかす。

 

勝手に脱走という言葉を使っているが、当たり前だが猫には脱走という言葉の意味など関係ない。特にオスの「あめ」は、例えば、ゴミ袋を外のボックスに仮置きするために東向きのサッシを開ける音がしただけで何処からともなくスーッと近づいてくる。うきうき外に出るつもりで。

 

「あめ」は、日頃から我々夫婦のどちらかがサッシの鍵をかけ忘れていないか、時々チェックしている。例えば、サッシの鍵をかけ忘れたのが金曜日のゴミ出し日だとすると、実際の脱走日は翌日の土曜の夜中だったりする。おそらくあるタイミングというか、日々のルーチーンとして重たいサッシの扉を前足で横にずらしてみているのである。鍵がかかっていないと判断すると、前足でわずかに隙間を作り、鼻先を突っ込んで、徐々に広げ脱出成功となる。外に出た猫がわざわざ閉めはしないので、他の2匹も後追い脱走となる。

 

また、夫婦どちらかの帰宅を車のエンジン音で判断しているらしく、「ハルカ」はお出迎えだけど、「あめ」や「じゅり」は隙あらばと待ち伏せしている。両手に荷物を持って足元が見えない状態で迂闊に扉を開けようなら、その瞬間にするりと脱走をかます

 

3匹とも去勢、避妊の手術済みだが、それでも何となく盛りらしい仕草を見せるときがある。それと関係があるか定かではないが、家の周りに外猫の気配があるときなどは、3匹とも尻尾の毛を逆立てまん丸に膨らませウーウーギャーギャー、東のサッシ、南のサッシ、西側のサッシと移動しガラス越しの追跡となる。外猫が既に遠くに去ってしまったあとでも3か所のサッシをあっち行ったりこっち行ったり、しばらく繰り返す。

 

毎日家の中に閉じ込められている3匹は当然、外を冒険したいらしい。お友達と対面したいらしい。取っ組み合いの喧嘩をしたいらしい。とにかく、年中、外に出たくてたまらないようだ。ケガや感染を避けるため、閉じ込めなければならない実情を気の毒に思う。

 

何となく3匹の気配がないので家中を探し回り、一匹もいなくなっているときは、当然だが、必ずどこかの方角のサッシが10cmほど開いている。掛け忘れていたことに気付いたときにはもう出て行った後だ。毎回反省するが、年に数回、夫婦のどちらかがやらかしてしまう。今では、お互いやらかし済みだから、どちらかの脱走ほう助罪を強く責めたりできなくなった。二人して本当にどんよりと心配な気持ちになる。我が子より猫を思う気持ちの方が強いことに罪悪感を覚える。でも、二人の息子たちには悪いが、間違いない正直な思いであるから仕方がない。猫は人間で言えば、言葉が通じない2歳くらいまでの赤ちゃんと同じだから仕方がないことだと思うようにしている。

 

脱走はこれまで10回は超えるだろう。その都度、夫婦で協力しながら懐中電灯片手に探し回る役と家で待機する役をやる。やらかした方は、落ち着いて家で待つことなどできないので外回り役が多い。でも外回りだからと言っても、例えば、よその家の車の下にいることがわかったとしても、絶対に摑まえることはできない。猫の素早さを上回れるわけがないので当たり前だから無駄なことはしないと決めた。でも、鈴の音や光る眼をたよりに探さないではいられない。ここにいるよと小声で「あめー」、「はるー」、「じゅりー」と家の周りの区画を二回りはする。

 

基本、床の間のサッシを30cmほど開け、待つしかない。それでもただ待つのではなく、小さめの声で「あめー、はるかー、じゅりー」と名前を呼んだり、カリカリの入った缶を上下に振りザッ、ザッと音で誘ったり、隣近所にとり夜中の傍迷惑な、不信な行動となる。

でも必ず、ほとんど何事もなかったように帰ってくる。一匹、あるいは2匹連れだって、ピョンと座敷に飛び乗り帰ってくる。例えばもし、1匹目が帰還したら、待つ体制を変えなければならない。2匹目と3匹目を待つときは、既に帰った猫が再脱走しないように床の間ひと部屋の内側の扉を全て締め切り、その締め切ったひと部屋のサッシだけ開けて待つ。

でも一番最初の脱走で「あめ」は、前後ろすべての爪がもがれ血だらけで首輪なしで、もう帰ってこないなあと諦めかけた3日目に帰ってきたことがあった。だから、逃走したら心配でならない。数十分で帰ってくることもあるが、ほとんどは数時間となる。今までは毎回感激の帰還で済んでいるが、万一、例えば、車の事故を考えれば脱走させる訳にはいかない。